お知らせ 第20回 第21回

特別講演内容を掲載致しました。

第21回沖縄県理学療法学術大会 抄録原稿

「シームレスな臨床教育戦略」

増原クリニック 中川法一

教育戦略を考える時の戦略とは「準備・計画・実践方法」だと考えられます。教育の準備とは、環境を整えたり、教員(=臨床実習や卒後教育の担当者)の能力を向上させたり、教育成果の評価法を検討したりすることです。日本各地で現在進行形の「臨床実習指導者講習会(16時間)」もこの準備に該当します。卒後のスタッフ教育であれば、教育担当者は先の講習会受講と同様な準備で教育スキルを向上させるための研鑽が必要となります。
計画は「めざす理学療法士(学生)像」を掲げておき、設定期間で達成可能な目標を設定し、その目標達成のために内容や方法などを検討することです。臨床実習の場合は、養成校との十分な摺り合わせが必要となりますが、卒前教育である臨床実習と卒後の臨床教育とが接続している(シームレスな連携)ことが重要なポイントとなります。臨床実習(卒前)だけを見た計画では役に立たず、卒後の在るべき理学療法士像に到達できる臨床教育計画が求められます。したがって、養成校と臨床施設との十分なコミュニケーションの中で、臨床教育の端緒である臨床実習は開始されるべきなのです。一方で臨床教育を始める前に、十分にレディネス(Readiness)を高めておくことが必要です。臨床教育にスムースに導入できるようなレディネスを高めるために、養成校の役割は学生に臨床で学ぶために必要な条件(知識、技術、社会スキル)を整えさせておくことであり、臨床施設側は受け入れ環境(指導者育成、指導方法の確立など)を整えておくことです。
実践方法については、指定規則の改定で診療参加型臨床実習が求められるようになりました。ここでのキーワードはICFの概念でも重要な「参加」です。ICFと同様に考えると、学生による診療参加とはさまざまな臨床場面で、知識や技術を駆使して理学療法士としての役割を果たすことだと言うことができ、そのためには指導者側には教育方法についての理論武装が求められます。指導者にとっては日々の臨床活動を同じ考え方で、エビデンスのない理学療法は行わない筈です。また、単なる参加(他動的参加)から積極的な主体的参加へ向上させるためには、指導者が翌日へ向けて学生自らで解決しておくべき課題をワンポイントアドバイスとして示し、学生の興味を対象者へ向けていくようなレディネス学習を取り入れることも効果的です。
診療参加を考える時に重要になるのが、いわゆる水準です。計画のところで触れましたがシームレスな臨床教育をめざすために、水準の存在を認識しておく必要があります。水準の項目を単に実習中に行う項目と思うのではなく、学生時代から始めるべき理学療法行為が示されていると考えると、卒後との接続が見えてきます。水準とは卒業時・卒後を見据えた教育計画の糸口なのです。講演では、医師教育における臨床実習の水準の変遷を概観しながら、シームレスな臨床教育戦略を考えていきたいと思います。

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